Q1 推薦入試と一般入試では、どちらが入りやすいですか?

推薦型の入試の場合は、基本的に志望理由書が必要になります。

入試の種類としては、かつてAO入試といわれた「総合型選抜」があり、「学校推薦型選抜」として指定校推薦と、やはり学校長の推薦が必要となる公募制(一般推薦)などが挙げられます。共通テストや大学が独自に行う試験は「一般選抜」といいます。

総合型選抜では志望先によって自己PRや、あるいは活動の履歴などを書かせる大学もあり、任意提出としながらも活動実績をポートフォリオのようにまとめて提出させる大学もあります。従って事前提出書類を書き上げるまでには、それなりの時間と労力が必要です。

さらに書類選考による一次試験を突破しても、二次試験では小論文テストや面接、グループディスカッション、プレゼンテーション等々、大学ごとに様々なハードルが待ち受けています。しかし、一つひとつやるべき作業を整理して段階的に向き合うことで、決して恐れるような入試ではありません。

ただし、すべての学部学科が総合型選抜を取り入れているわけではないため、必ずしも入りたい学部学科を選べません。ゆえに一般入試にならざるを得ないケースもあります。

結論が後回しになりましたが、受験に抜け道はありません。いずれも地道な努力が求められます。ただ、事前提出物の少ない大学ならば、受験生の負担は少ないといえます。

Q2 推薦入試のメリットとデメリットを教えてください。

最大のメリットは、ほぼ年内に合否が決定するため、万一不合格になっても一般選抜のテストを受けられることです。挑戦のチャンスが増えます。

また「志望理由書」を書くことによって、論理的思考や文章力が格段に向上します。

さらに自身の目的を明確にするため、将来設計をより具体的に立てることができます。その結果、進学後の目標や学修計画を定めやすくなり、有意義な大学生活の第一歩となります。

何より、残された高校生活を満喫しながら大学進学後を視野に入れた準備ができます。ただし、共通テストや一般選抜の試験を控えた友だちへの配慮を忘れないよう注意が必要です。

デメリットとしては、入試日が前倒しになるため、一般選抜組と本格的な受験準備においてタイムラグが生じます。まだ周囲がその気になっていないときに、総合型選抜では既に準備をしなくてはなりません。目的意識を明確にし周囲に流されない覚悟が必要です。

従って教科試験を回避できるという安直な気持ちや、志望理由書は塾の講師が何とかしてくれるだろうといった他力本願な気持ちでは失敗します。

さらに近年、問題になっているのが、一般選抜による新入生に比べ、学力的な弱さが指摘されています。評定を重視しない判定方法が招いた結果ともいわれ、大きく見直しが図られています。

早い時期の合格による気の緩みや、一般選抜向けの受験勉強が不要となることも要因の一つであり、大学によっては入学前教育として課題の提出を義務づけています。

Q3 志望理由書で注目されるのは、どこでしょうか?

成績では判断できない志願者の目的や意欲、そしてアドミッションポリシーとの適合性が重視されます。小論文である以上、論理的思考も審査の対象です。そのうえで資質や可能性、人間性などにも注目されます。

実際に執筆をするときには、何のために、何を学ぶのかといった、大学進学の原点を見失ってはなりません。

構成のテンプレートとしては、以下のような流れです。

①将来の目的、②その背景(きっかけ等)、③目的のために何を学びたいのか、どのような知識やスキルを身に付けたいのか。①③がしっかりと書けていなければ、試験官の心を動かすことはできません。さらにプラスαとして、④志望する大学でなくてはならない理由が必要です。

日本には788の大学が存在します。(2023年2月14日現在 文部科学省「学校基本調査」より)防衛大学校や気象大学など文部科学省の所轄外や専門職大学も含めて、国公立が187校で私立が620校になります。

この中から、なぜ志望大学を選んだのか、なぜその大学でなければならいのかは必須です。うちの大学でなくてもよかったのでは?などと思われたら、合格は遠のきます。

ちなみに、これは専門学校と大学の選択でも同じことが言えます。技術系・医療系の面接でよく聞かれるのが、「専門でも資格が取れるのに、なぜ大学なのか?」という質問です。志望する大学でなければならない、しっかりとした理由が必要です。

そのためには志望大学のリサーチが重要です。大学案内だけではなく、ホームページやオープンキャンパスなどで積極的に情報収集をしてください。

Q4 総合型選抜は評定を重視しないと言われますが、本当ですか?

AO入試が始まった頃は、確かに評定よりも目的観や意欲、特技、高校時代の活動等に焦点を当てた選抜が行われていました。しかし現在の総合型選抜では、出願条件として成績の最低ラインを設定している大学も見られます。

大学進学の目的は学びであり、大学側も学生に対し専門的な知識やスキルの修得を目的としますから、基礎的な学力は求められます。従って、高校での評定が低いと現実には難しいと言わざるを得ません。特殊な例として芸術系やスポーツ等での推薦枠がありますが、これには(ひい)でた活動実績が求められます。

評定平均「3.5以上」とか「4以上」などと受験資格が定められていると、条件を満たさなければ出願そのものができません。評定が「3」を切るような場合は入試方法から見直す必要があります。

総合型選抜をはじめ、推薦型の受験で進学を考えているのなら、まずは学校の成績を上げることに力を注ぐべきでしょう。

参考までに、評定判断の基準は「A:5.0~4.3」「B:4.2~3.5」「C:3.4~2.7」となります。

Q5 将来の目標は大学入学後に見聞を広めて決めたいのですが……。

一般選抜であればまったく問題はありませんが、総合型選抜では通用しないと思ってください。

大学によってはリベラルアーツに力点を置き、主専攻を後回しにするケースもありますが、それでも目的観や方向性の定まらない志望理由書では通用しません。

何のために大学で学ぶのか、という自身の目的は明確にしておくべきです。

例えば、国際化が進む現代社会において、国を限定せず困っている人々の役に立っていきたいと考えているならば、困っている対象や問題点を絞り込むことです。

途上国の貧困、難民、女子の教育問題等々、世界にはさまざまなグローバル・イシューが山積しています。あるいは日本国内でも海外から働きに来られた外国人労働者の方は、言葉や子どもの教育で悩まれています。

どこに焦点を当てるのか? どのような支援があるのか? そのためのリサーチもせずして「大学入学後に……」などと言うのであれば、安直な姿勢が見抜かれます。

難民問題ならば食糧や生活衛生や医療面での支援など、求められている救済は数知れません。リサーチが深まれば、自然と方向性も見えてきます。

一般選抜には一般なりの苦労があり、総合型選抜には総合型の苦労があります。努力なき受験に結果はついてきません。

Q6 文章を書くことも読むことも苦手です。志望理由書を仕上げられますか?

仕上げることはできても、構成や内容が合格レベルか否かは別問題です。従って「合格」を視野に入れた仕上げとなると、答えはNOです。

あくまでも当塾の場合ですが、将来の目的が定まっていない生徒に対しては、まずじっくりと生徒の話に耳を傾け、書くべき方向性や内容を定め、次に徹底的にリサーチをさせます。なぜなら、「文章が書けない」「苦手」という生徒の多くは、情報不足に原因があるからです。

書くべきネタがない状況で、原稿用紙に向かっても筆が進むはずがありません。が、生徒はそれさえ気づいていませんし、何をどう調べてよいかすらわかっていません。にもかかわらず無理をして原稿のマス目を埋めるわけですから、「合格」レベルの原稿が仕上がるわけがないのです。

文章が苦手であっても、将来の目的があり、リサーチがしっかりできていれば、情報を取捨選択し構成を整理することでしっかりとした骨組みができます。

文章表現については講師の添削によりブラッシュアップするため、文章が下手でも問題はありません。重要なのは、最後までやり抜く覚悟があるか否かです。

Q7 自力で書いた志望理由と合格レベルの志望理由は、どこが違うのですか?

誰の添削も受けず自力で書き上げたものが往々にして通用しないのは、①余計な情報が多く内容が取捨選択されていない。②論理的展開ができていない。③そもそも目的が漠然としていて、何のために学ぶのか、進学の意味が明確になっていない、等々です。

そしてもう一つ、④他人が読んだときに納得する内容になっているか。①~③までが曖昧ならば、当然、赤の他人である試験官の心は動かせません。

志望理由は文字通り、大学を「志望」する「理由」です。

ⓐどのような志をもち、ⓑそのきっかけが何であったかを述べ、ⓒさらに目的のために大学では何を専攻するのか、どのようなスキルを身に付けたいのか、ⓓなぜ、その大学でならなければならないのか。──といった事柄を、倫理的に、かつ具体的に書かねばなりません。

といっても、どこまで具体的に書けばよいのかも曖昧なはず。具体性はサジ加減でもあります。試験官を説得できる内容に仕上げていくためには、プロの視点とテクニックによる指導が必要不可欠といえます。

「志望理由書」を読んで合否の判定を下すのは、見ず知らずの試験官です。自己満足では通用しません。

Q8 何も知らない試験官が読むのだから、フェイクな内容でもバレないのでは?

ほぼバレます。相手は百戦錬磨です。何百何千という志望理由書を読み込んできた試験官ならば、真偽も本気度も見抜きます。

これは言葉にしない相手の腹の中を読みとってしまう洞察力に似ています。悩み抜いて書いたものには、その足跡が見えます。手慣れた大人が書いたものには、四苦八苦の跡がありません。サラリと美しい文章では、採点官の心は動かせないのです。

ゆえに、巧い文章が通るとは限りません。表現に多少の矛盾があっても、熱意が伝わるものであれば一次通過をします。

試行錯誤しながら苦労をして書くからこそ、誠実さがにじみ出ます。地道な努力が人の心を動かす言葉を生み出します。

Q9 自己紹介と自己PRは、何が違うのですか?

自己紹介について、国語辞典では「初対面の人に自分の名前や経歴を知らせること」と説明されています。言い換えるならば、自身のプロフィールを紹介する程度の‟簡単な説明”でよいのです。

それに対して自己PRは、自分自身を価値づけることです。わかりやすい言葉を使えば、自己PRとは「自己宣伝」です。

自身がもつ資質や能力、特技や活動実績を伝え、自分の価値や可能性を示します。過去の経験に基づく根拠によって証明することで、説得力のある自己PRになります。

自己紹介にありがちな自身の短所や弱点については、あえて触れる必要はありません。また、華々しい活動でなくてもよいのです。

中学・高校時代、バレー部でずっと補欠だった男子生徒が、レギュラーメンバーのため、部全体を盛り上げるために、地道に生真面目に努力をし続けてきた経緯を書いて教育学部に合格した例があります。縁の下の力持ちとしての心がけと努力は、最高の自己PRでした。

Q10 時間内に書き上げねばならない小論文テスト対策は、どうしたらよいでしょうか?

受験生にとって、この対策が一番難しいのです。願書作成と違い、本番のテスト中に講師が解答をチェックして、構成や内容や文章表現を添削することはできません。本番でどのような問題が出るかもわかりません。だからといって何も対策をしなければ、手も足も出ません。

対策としては、まず小論文テストに対する解答方法(手順・読解のコツ・構成etc.)を頭に入れて、そのうえで小論文の演習問題を解くことです。

志望校が決まっており、短いスパンで小論文力をつけるのならば、やはり過去問が効果的です。過去問は出題の傾向性や解答の手順も身に付きます。過去問が公開されていない大学の場合は、類似した問題で対策をします。

しかし、闇雲に問題を解いたからといって実力がつくわけではありません。自己流では却って迷路に入り込み、見通しが立たなくなる場合もあります。やはり基礎を踏まえた専門的な指導が不可欠です。

実力を養うためには、解答の手順や構成を理解したうえで、読解や考察、根拠の妥当性、文章表現などのレベルアップを図る練習を重ねることです。そのために、できるだけ多くの問題を解き、添削指導を受けたあとに再執筆(理解度によっては再々執筆まで)をします。

小論文の上達はスポーツと同じで‟体得”です。体得させるのは脳です。自身の弱点を認識し、解答のコツを覚え、閃きを上手く活用して本番で勝負できる実力を養うのです。

小論文といっても高校生に向けられた問題です。恐れるには足りません。努力は嘘をつきません。

Q11 総合型選抜の準備はいつ頃からはじめるのがベストですか?

志望先にもよりますが、実質的な願書作成の準備には最低でも半年は見るべきでしょう。提出物が志望理由書だけではない場合は、(提出物の内容にもよりますが) さらに3か月〜半年は前倒しで考えていないと合格ラインに届く提出物は仕上げられないと思ってください。

書くことに抵抗感がない、そこそこ書ける自信があるといった生徒であっても、試験官が納得する内容に仕上げるのは容易ではありません。何しろ思ったことを、そのまま自由に書ける作文とは違います。

「Q3」「Q7」でも書いていますが、志望理由書はただ大学を「志望する理由」を書くだけではなく、「将来の目的」、そのために「大学で何を学ぶのか」「なぜその大学なのか」等を書く必要があります。

ゆえに将来の方向性を定め、描くビジョンを具体的にし、なおかつ大学についても充分なリサーチが求められます。オープンキャンパスもリサーチに入ります。

情報がなければ文章は書けません。調べるのも書くのも、受験生本人がやるべき作業です。

ここで注意すべき点は、行き当たりばったりで調べても必要な情報にはたどり着けません。リサーチにも羅針盤が必要です。また出願には活動実績が求められるケースもあります。志望理由書の作成だけでなく、実績をつくる期間も視野に入れておくべきでしょう。

蛇足になりますが、志望理由書を書くだけ、体裁を整えるだけならば、大学によっては1~2か月でも何とかなるでしょう。また保護者の費用的負担を無視するわけにもいきません。

塾(予備校)へ通う開始時期を迷っているのならば、先生や専門家のアドバイスを参考にしながら志望先を決め、願書の内容や受験の当事者である自分の力量を冷静に判断し、指導のスタートを判断していくことです。

Q12高校受験で小論文が必要です。どんな対策をすればよいですか?

難しい質問です。まず作文と小論文の大きな違いから説明します。

作文は「伝達」、そして小論文は「説得」を目的とします。

これまでの義務教育の中で、作文は教科(国語)の勉強の延長線上にあり、原稿用紙の使い方や構成(起承転結)や文法、言葉の使い方などに焦点を当て、‟書く力” を養う目的を持っています。その狙いは、様々な情報の正確な「伝達」にあります。

従って作文を読んだ先生が、内容についてどのような感想を持とうと、あまり関係がありません。まずは生徒が、自分の考えを率直に書けるようになることに力点を置いているからです。ゆえに大人たちは、「思ったことを、思った通りに書けば良い」というアドバイスをしてきました。

片や小論文の「説得」の先にあるのは、合格・不合格です。合格のためには、読み手である試験官を説得しなければなりません。自分の思いを作文のように自由に書いても、相手が納得するとは限りません。試験官と考え方が違っていても、「なるほどな、こんな捉え方も考え方もありだな」と思わせる内容でなくてはならないのです。これが非常に難しいわけです。

そこで主張を裏付ける根拠が必要になったり、筋道の通った論理的な構成や文章表現と総合的な ‟書く力”、さらにここへきて唐突に ‟考える力” が求められます。

従って ‟対策” は一朝一夕に身に付くものではありません。書き方の手順をマスターするだけではなく、課題文の読み取り方や、根拠の書き方等々、過去問を使って練習を重ね考察力を身に付ける必要があります。

そしてもう一つ、解答は人に読んでもらうことが重要です。自身の文章の問題点は、自分ではわからないものです。評価は高校の先生が行うのですから、見ず知らずの他人が読んで理解できるか、それ以上に納得してもらえるか否かがカギとなります。

と、ここまで書くと手強いどころか、太刀打ちできないような不安に襲われるかもしれません。しかし、小論文は練習の分だけ必ず力が付きます。もちろん超特急とはいきませんが、じわじわと身に付いていくのです。

そして高校受験の小論文は、基礎的な国語力があり、論理的な書き方ができるようになれば、何とかなります。あとは根拠に使う情報や知識が必要ですが、わざわざ難しいことを書く必要はありません。

とは言っても、高校によっては国際社会の出来事が問題となったり、長文であったりします。小論文対策においては、解き方のテクニックを含め専門的な指導を受ける必要性を感じています。

Q13 面接練習って、必要ありますか?

必要です。なぜなら、立ち居振る舞いから言葉の使い方、回答の内容まで、客観的な視点で見る必要があるからです。

鏡を見て、あるいはスマホで自撮り録画をするだけでは、客観的視点とはいえません。面接練習では、赤の他人の目を通して、どう映るかが重要なのです。

ドアの開け閉め、お辞儀、座り方、話し方といった表面上の問題から、回答の内容まで、第三者の大人の目を通してチェックしてもらうべきです。

面接で合否を判断するのは、自分以外の、それも見ず知らずの大人なのです。

そして、もう一つ。

面接に自信をもって臨みたいのならば、しっかりとリサーチをすることです。将来の仕事、大学、目的観、動機等々。

例えば大学の理念やアドミッションポリシーだけ調べるような、表面的なリサーチでは通用しません。将来の夢を達成するためには、大学で何を修得すればよいのか? カリキュラム・シラバス・教授・ゼミ・実習・フィールドワーク・リベラルアーツ・留学など、さまざまな角度から具体的に調べることです。

志については、将来に目指す仕事の内容・社会的役割なども調べて目的観を明確にする必要があります。さらに動機について、受験生自身の内面や過去を掘り下げます。これもリサーチのうちです。自身の思いが漠然としていては、面接官を説得できません。

国公立大学を受ける場合は、地域問題についてのリサーチが必須です。国立・公立大学は地域社会の発展を目指していますから、エリアの問題点も理解していないような姿勢はマイナスです。

以上は志望理由書を書く時点で行うものですが、志望理由書が不要だったり字数が少なかったりした場合、面接対策としてやるべき工程の一つです。

しっかりとリサーチができていれば、どういう角度から質問が来ても恐れるに足りず。緊張や不安は、情報収集と模擬面接で大幅に解消できます。

ちなみに、丸暗記はお勧めしません。‟暗唱” は面接官の心を動かしません。最終的な準備はポイントとなるキーワードを押さえ、本番では心から発する思いを誠実に伝えることです。そのために準備としてリサーチが重要です。